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COLUMN 【CATEGORY−インテリア ver.2 】


『 名作椅子に秘められた北欧デザインの軌跡 』      Alvar Aalto (アルヴァ・アアルト)A
鉄、コンクリート、ガラス――私達がモダン建築を思い描く時、頭に浮かべるのはこんな材料ではないでしょうか。パイミオ・チェアが生まれた頃のヨーロッパ建築界は、まさにこうした近代工業の産物と新しい工法とによって、国際的普遍性を備えた建築を目指す「インターナショナルスタイル(国際様式)」全盛の時代でした。アアルトもまた少なからず影響を受けた一人ですが、それは彼の一生のものとはならず、後に有機的デザインへと辿り着くことになります。
それにしても、疑問が残ります。そんな時代にあって、なぜパイミオ・チェアはモダンであるばかりでなく、こんなにも有機的に仕上がったのか。やがて私はアアルトについてさまざまな記事を読むうち、その答えは彼の、そして北欧のナショナリズムの中にあることを知りました。
パイミオ・チェアの特徴は、軽快なプライウッド(積層合板)とそれをしなやかに曲げる加工技術にあります。素晴らしいのは、そのどちらも自国で賄えること。原料になる木は、豊かな森から。そして曲げの技術は、犬ぞりのスキー部分に昔から施されていた伝統的な技法なのだそうです。アアルトと職人達のインスピレーションとアイデア、そして努力の結晶が、鉄を使わずともモダンで、なんとも優雅なあの美しい曲線を生み出したのです。面白いのはデザインより先に、自国の産業発展の意図があったこと。林業以外に目立った産業がなかったフィンランドで、アアルトは量産できる優れた家具産業の道を切り拓いたと言えます。
それは息の長い産業となりました。きっと彼もそうなることを確信していたことでしょう。パイミオ・チェアを目にした人がそこに普遍性を見出すように、彼もまたそうであったはずだから。一見すると保守的なナショナリズムの中から新たな可能性を生み出す。彼はそんなやり方で北欧デザインのインターナショナルを確立したのです。ポートレイトの瞳の奥に、私は今、彼の自信を改めて見ています。(おわり)